「更紗模様ってどんな柄の着物?」
「更紗模様の着物にはどんな帯を合わせれば良いのかな…」
「更紗模様の着物のコーディネートを知りたい!」
こんにちは。『着物買取女将』のかずよです。
異国情緒溢れる更紗模様の着物は、特徴的な柄だけにコーディネートが少し難しいものです。
私も更紗模様の着物を着こなしたいのですが、どんな帯が合うのか分からなくて…
着物のコーディネートは柄合わせだけでなく、季節感やTPOに合わせた格も意識しなければいけないので大変ですよね。
でも安心して下さい。
今回は更紗模様の着物や柄の特徴、正しい帯び合わせやコーディネート法などを分かりやすくお伝えしていきますね!
この記事の目次
更紗模様の着物とは?特徴を解説
インドに起源を持つと言われている更紗模様。
その特徴を分かりやすくお伝えしていきます。
更紗模様の特徴
更紗は、主に木綿に二色または多色の型染めを施したもので、独特の雰囲気を持つ生地です。
独特の色合いが美しく、着物生地としてだけではなくインテリアなどにも使われています。
更紗模様の帯や着物は個性的な印象ですが、実際にお召しになると意外になじみやすく、お持ちになっていると長く楽しめます。
更紗模様の柄の特徴
更紗はインドで生まれたとされ、その模様にもインド風のものが多く見られます。
異国情緒たっぷりの草花や樹木、動物や人物などが表現されています。
更紗の代表的な柄のひとつ、ペイズリーは特にペルシャの更紗に多く見られます。
東方では古くから、樹木は生命の象徴とされてきました。
なかでも糸杉はイスラム教では尊い樹木とされていて、この糸杉が風に揺れる様子を図案化したものがペイズリー柄であると言われています。
また同じく代表的な唐草模様は、古代エジプトの蓮の花が起源であるとされています。
エジプトからギリシャ、ローマを経てインドへと伝わり、華やかな唐草模様となったのです。
【コーディネート法】更紗模様の着物に合う帯
更紗模様の着物は、ちょっとしたお出かけやお集まりに気軽にお召しになれる便利な着物です。
生地全体に柄が配置されているので、コーディネートの際には小紋のようにお考えになるとよいでしょう。
よい機会なので、更紗模様を例に着物と帯のコーディネートについて考えてみましょう。
着物と帯のコーディネートの際には「今日はおろしたてのこの着物を主役に」「今日は柄が素敵なこの帯を主役に」といった具合に、まずはその日の主役を決めましょう。
大切なのは、着物と帯がお互いを活かしあうことです。
例えば、個性的な柄の着物に同じく個性的な柄の帯を合わせたのでは、お互いに主張しあってしまい引き立て合うことができません。
更紗模様の着物に同じような更紗模様の帯というコーディネートを想像してみてください。
これではどちらも主役にはなれず、残念なコーディネートということになってしまいます。
主役が決まったら、主役の色や柄行を優先してコーディネートを考えます。
その日の主役が着物であれば主役でない方の帯は控えめに、主役を引き立てる色や柄行のものを選びます。
色を合わせる方法には、同系色・反対色、明暗などがあります。
同系色を合わせれば上品に、反対色を合わせれば個性的なコーディネートになります。
更紗の場合は、比較的濃いめの色が多いのが特徴です。
更紗の着物を主役にしたときには主張の少ない薄めの色の帯を、更紗の帯を主役にしたときには紬など全体に大人しい雰囲気の着物を選ぶようにするとよいでしょう。
どちらの場合も主役の柄のなかから一色を選んで合わせると、まとまりがよく落ち着きます。
また帯揚げや帯締めの色は、着物と帯をつなげる役目をしてくれます。
着こなしをきりりと引き締めたいときには、強い味方にもなります。
着物上級者は着物以上にたくさんの帯揚げや帯締めをお持ちになって、コーディネートを楽しんでいますね。
更紗模様の着物は季節を問わずに着られる
着物には、いちはん大切な格のルールのほかにも季節の決まりごとがあります。
桜の柄の着物は春先に、椿の柄の着物はまだ寒い時期に…といったように、季節を先取りしてお召しになるのが基本です。
今回お話ししている更紗模様の柄には、決まった季節がありません。
季節を気にせず通年お召しになれるという点も、更紗模様の着物の魅力ですね。
更紗模様の着物の格
着物の格では、更紗はカジュアルなおしゃれ着・普段着になります。
全体に柄があるため小紋のようなイメージですが、小紋よりもさらにカジュアルな着物とされています。
更紗の訪問着を結婚式に着ていっても大丈夫?
訪問着として仕立てられたものであれば、ある程度のお席まではお出かけになれます。
ただ訪問着もさまざまで、紋の入った訪問着や古典柄のものに比べると、更紗の訪問着はやはりカジュアルな印象になります。
ご親族のお席に座るのであれば、もう少し格のたかい着物をお召しになった方がいいでしょう。
比較的気負わずに出席できるお友だちの結婚式やレストランでの披露宴などであれば、フォーマルな帯を合わせて出席なさるとよいでしょう。
ただし、ここでお話ししたのはあくまでも更紗の訪問着(正絹で仕立てられたもの)についてです。
木綿の生地を染めた更紗の着物は結婚式などのお席には向かないものなので、ご注意ください。
更紗模様の歴史と世界の更紗
更紗はインドで生まれたとされています。
インドでは古くから綿が栽培され、紀元前3千年ごろには木綿の生地に手書きで模様を描いた更紗がつくられていたと言われています。
更紗はその後、古代エジプトやローマにも伝わり、貴族たちの愛用品になります。
室町時代に南蛮船によって日本に持ち込まれ始めた更紗は、舶来品として珍重されます。
異国風の雰囲気がたいへん喜ばれ富裕層の愛用品となるほか、「名物裂」として茶人たちのあいだでももてはやされます。
日本語の「更紗」は「サラサ」という音に漢字を当てて広まったものです。
16世紀末に記された『東方案内記』には、木綿の布の名称として「saraso」や「sarasses」が見られることから、これが語源とも考えられています。
またインド語で「美しい織物」という意味の「サラサー」、同じ意味のポルトガル語「サラシャ」を語源とする説もあります。
次に、各国の更紗について見ていきましょう。
インド更紗
古い歴史をもつインド更紗は、現在でもさまざまな製品がつくられ、海外にも輸出されています。
壁掛けや敷物、ベッドカバーなど室内装飾布が多いことも特徴です。
模様はヒンドゥー教の神々や古い神話をモチーフにした宗教的なもののほか、樹木・唐草・ペイズリー・動物など、それぞれの地域の特色があり多岐にわたります。
色は茜と藍を主として、黒や萌黄色を添えた色調のものが一般的です。
染色の技法は、先媒染と蝋(ろう)による防染が併用されています。
鉄または竹でできたペンのような道具に媒染剤をつけて文様を手描きしたあとに染料につけることで、媒染剤をつけた部分だけに色が入ります。
これを先媒染と呼び、インド更紗では主に茜色を出すために行われています。
さらに藍色を出すために行われるのが蝋による防染です。
藍色に染めたい部分を除いて布に蝋を置き、藍染が行われます。
ジャワ更紗
インドネシアのジャワ島を中心につくられているジャワ更紗は「バティック」と呼ばれ、日本でもよく知られています。
民族衣装としても有名ですし、長袖のバティックのシャツは現在でもインドネシアの正装とされています。
2009年には、ユネスコの世界無形文化遺産に認定されました。
ジャワ更紗は、11~12世紀ごろにインドから伝えられた更紗の技法をもとに生産が始まりました。
多くの種類の模様があり、植物や蛇、自然界の素材を連続模様として配置したものがもっとも特徴的で有名です。
蝋防染の手法が用いられ、手描きのものは「チャンチン」と呼ばれる銅の道具から細くたらした蝋で柄を描いていきます。
現在では土産物や民芸品としての生産が増え、化学染料を用いて型染めされたものがほとんどですが、手描きのものはたいへん細やかで美しく値段もまったく異なります。
ペルシャ更紗
インド更紗はペルシャにも伝わり、ペルシャでも紀元前2千年ごろから更紗が染められるようになりました。
イランの古い都市イスファハーンが産地として有名です。
ペルシャ更紗は、現地では「ガラムカール」と呼ばれます。
「ガラム」は筆を意味し、かつては模様の全てが筆で描かれていたとされています。
現在では、模様を掘った木のブロックをスタンプのように用いて柄をつける手法が用いられています。
日本各地で発達した独自の更紗模様
室町時代に日本に伝わった更紗は、舶来品として一部の富裕層に愛されました。
江戸時代に入ると木綿が普及するようになり、日本国内でも更紗がつくられるようになっていきます。
主な産地は長崎、佐賀、京都、境、江戸などで、これらは和更紗と呼ばれて広まっていきました。
初期の和更紗はインドやジャワの更紗を真似てつくられていましたが、次第に各地で独自の技術や模様が生み出され、羽織裏や袋物用の生地として人気を集めます。
その後大正時代になって、更紗模様は木綿ばかりでなく羽二重と呼ばれる絹織物の染めにも用いられるようになりました。
さらに昭和に入ると、縮緬や紬の生地の染めにも用いられるようになり、ようやく女性用の着物に仕立てられるようになっていきます。
ここでは、和更紗のいくつかをご紹介しますね。
鍋島更紗
まず、鍋島更紗をご紹介しましょう。
鍋島藩(現在の佐賀県と長崎県の一部を領地としていました)では、早くから更紗がつくられていました。
この地は朝鮮出兵の拠点であり、朝鮮から連れ帰った工人が更紗をつくっていたとされています。
鍋島藩は更紗の制作を奨励し献上品としたため、鍋島更紗はたいへん品格のたかい更紗として知られるようになっていきました。
木版と型紙を併用した捺染という手法を用いている点が特徴です。
鍋島更紗は明治時代に一旦生産が途絶えましたが、1960年に再び生産が開始され「木版摺更紗」として復活を遂げました。
この「木版摺更紗」の技法はたかく評価され、製作者の鈴田滋人氏は人間国宝に認定されています。
江戸更紗
江戸時代中期から末期にかけて、江戸の町でも更紗がつくられ始めました。
江戸更紗の特徴は型紙摺りの技法で、30枚以上の型紙が用いられています。
本来の更紗の異国情緒を残しつつ渋みも持ち合わせ、江戸の粋を感じさせる更紗です。
更紗模様の着物の染め方
(出典:https://tokyoteshigoto.tokyo/feature/01/)
更紗模様の染めには多くの技法があります。
更紗発祥の地とされるインドでは、先媒染と蝋による防染が用いられています。
媒染剤をつけたペンのような道具で文様を手描きし、さらに次の色のために蝋を使って防染を行います。
同じ手描きの手法でも、インドネシアのジャワ更紗では「チャンチン」と呼ばれる銅の道具から細くたらした蝋で柄を描き、柄の部分に防染を施す手法が用いられます。
ほかにも、ペルシャ更紗や鍋島更紗のように木の道具を使う染色方法もあります。
ペルシャ更紗では、模様を掘った木のブロックをスタンプのように用いて柄をつくるという原始的な手法が用いられています。
一方、鍋島更紗では模様の輪郭にのみ木型を用い、さらに何種類もの型紙を使って染める細やかな技法が取り入れられます。
さらに江戸更紗では、多くの種類の型紙で染めが行われます。
このように染色に用いる道具や技法がさまざまなところも、各地の更紗模様の魅力・奥深さと言えますね。
更紗模様の着物の特徴を理解して、美しくコーディネートしましょう!
更紗模様の着物は、動植物や人間が描かれている異国情緒溢れる柄が特徴です。
柄が個性的だから、合わせる帯は控えめの色合いが適切なことも勉強になりました!
それは良かったわ。
着物を正しく着こなすには、TPOに合わせた格も意識する必要があります。
他の着物や帯の格やTPO別のおすすめ着物はこちらの記事で紹介しているので、合わせて読むことをおすすめします。