「加賀友禅の着物ってどんな着物?」
「加賀友禅にはどんな帯を合わせると良いのかな…」
「加賀友禅の有名作家の着物はどんな柄なんだろう?」
こんにちは。『着物買取女将』のかずよです。
加賀友禅は高級で有名な着物だからこそ、正しく着こなせなければ恥をかいてしまう可能性があります。
私も加賀友禅に興味があるのですが、どんな帯を合わせたら良いか迷っていて…
着物の着こなしは季節やTPOに合わせた格を意識しなければならず、難しいものですよね。
でも安心して下さい。
今回は、加賀友禅の着物や柄の特徴、正しい帯合わせの方法、歴史や有名作家など、加賀友禅の全てを分かりやすくお伝えしていきます!
そもそもの友禅染めの着物の特徴や歴史などについてはこちらの記事で詳しく解説しているので、基礎から知りたい方はこちらの記事からご覧下さい。
>>『友禅染めの着物とは?模様や柄の種類や歴史、有名作家などを紹介!』
この記事の目次
【加賀友禅とは?】金沢県発祥の着物の特徴
加賀友禅は、石川県金沢市を中心とした地域でつくられる染めの着物です。
もとは「御国染」「加賀染」などと呼ばれていましたが、全国に普及していくにつれて「加賀友禅」と呼ばれるようになりました。
宮崎友禅斎が生み出した友禅の技法で描き出された美しい柄が特徴で、経済産業大臣指定の伝統的工芸品にも認定されています。
加賀友禅の柄や模様の特徴
加賀友禅の柄は、繊細な手書きの線で表現された写実的な草花の模様が代表的なものです。
武家風の落ち着いた雰囲気のなかに、自然の美しさが巧みに描き出されています。
金箔や絞り、刺繍といった技法はほとんど用いられず、染めの技法のみで仕上げられている点も特徴のひとつと言えますね。
加賀友禅の色彩豊かな「加賀五彩」
(出典:https://ameblo.jp/kagayuzen/entry-11091909808.html)
加賀友禅の染め色は「加賀五彩」と呼ばれる色をもとにつくられています。
「臙脂・黄土・藍・草・紫」の五つの色を加賀五彩と呼び、この五色を微妙な感覚で混ぜ合わせ色を作り出します。
それぞれの作家が独自の色をつくり染めるため、加賀友禅は価値ある一点ものとされています。
加賀友禅の「虫食い」技法とは?
(出典:https://kimonosin.com/kagayuuzen-musikui/)
加賀友禅の特徴的な技法に「虫食い」があります。
これは自然に忠実、かつ写実的な加賀友禅ならではの技法で、虫に食われた葉・朽ちた病葉(わくらば)の様子まで描き出すというものです。
虫食いの技法を見れば、一目で加賀友禅と分かると言われています。
加賀友禅の「外ぼかし」技能とは
(出典:http://www.kagayuzen.or.jp/know/)
「外ぼかし」も加賀友禅でたいへん多く見られる技法です。
これは花などを描くときにグラデーションをつける技法で、加賀友禅では外側を濃く、内側にいくほど薄くぼかしていくというものです。
同様の「ぼかし」は京友禅にも見られ、こちらは内側を濃く、外側にいくほど薄くぼかす加賀友禅とは逆のグラデーションになっています。
加賀友禅の歴史
加賀の国では古くから染物が盛んで、桃山時代末期ごろにはすでに紺屋・茜屋と呼ばれる染物屋が多く営まれていました。
当時は無地染が盛んでまだ絵柄はなく、加賀産の絹織物を梅の樹皮や根の染料で染めた「梅染め」が代表的なものでした。
この梅染めの工程を何度か繰り返すことによって生み出される、黒味がかった「黒梅染め」なども有名です。
これらの梅染めは献上品にも用いられ、「加賀の御国染」として加賀藩が誇る品ものでした。
その後、無地の染物に絵柄が入るようになります。
細やかな絵を描くための防染の技術も取り入れられ、加賀の染物は「兼房染(けんぼうぞめ)」「色絵」「色絵紋」などとして発展していきました。
1712年、友禅の名の由来となった京都の扇絵師・宮崎友禅斎が加賀を訪れます。
友禅斎の扇絵は人気がたかく、京都ではすでにその絵を文様にして小袖が仕立てられていました。
細やかな絵柄の色同士がにじむことを防ぐために輪郭に細く糊を置く友禅染めの技法も生み出され、これも友禅斎によって加賀へ伝えられたとされています。
こうして持ち込まれた友禅染めの技術とデザインが色絵紋に取り入れられ、加賀友禅は完成されていきました。
当初は「御国染」「加賀染」などと呼ばれたこの染物が、全国にひろがるにつれ「加賀友禅」と呼ばれるようになったのです。
【種類別】加賀友禅の着物の画像と値段相場
着物の種類別に加賀友禅の値段相場をご紹介します。
ただし作家ものになると値段が跳ね上がるので、あくまでも参考程度とお考えください。
加賀友禅の振袖
加賀友禅の振袖の値段相場は、新品のもので150,000円前後、中古のもので60,000円前後のものが多いです。
加賀友禅の訪問着
加賀友禅の訪問着の値段相場は、新品のもので150,000〜200,000円前後、中古のもので130,000円前後のものが多いです。
加賀友禅の黒留袖
加賀友禅の黒留袖の値段相場は、新品のもので100,000〜200,000円、中古のもので60,000円前後のものが多いです。
加賀友禅の小紋
加賀友禅の小紋の値段相場は、新品のもので30,000円前後、中古のもので10,000〜20,000円のものが多いです。
加賀友禅の色留袖
加賀友禅の色留袖の値段相場は、新品のもので150,000円〜300,000円、中古のもので150,000円前後のものが多いです。
加賀友禅の付け下げ
加賀友禅の付け下げの値段相場は、新品のもので150,000円前後、中古のもので50,000〜100,000円のものが多いです。
加賀友禅の浴衣
加賀友禅の浴衣の値段相場は、新品のもので50,000円前後、中古のもので30,000円前後のものが多いです。
加賀友禅の有名作家や人間国宝
加賀友禅は、工程のほとんどを一人の作家が行う「一貫制」でつくられています。
そのため、作家それぞれの個性が強く出ると言われています。
ここでは加賀友禅の有名作家について見ていきましょう。
木村雨山
金沢出身の加賀友禅染色家・木村雨山(うざん)は、1905年に高等小学校を卒業後、名人と言われた加賀友禅作家・上村雲嶂に師事し、大西金陽に日本画を学びます。
1923年に独立、1955年には重要無形文化財技術保持者(人間国宝)に認定。
片刷毛を使ったぼかしなど、すぐれた日本画の技術を友禅に用い、独自の美しい世界を表現しました。
代表作には「花訪問着」や「山吹訪問着」があります。
二塚長生
富山県出身の加賀友禅染色家・二塚長生(ふたつかおさお)は1967年加賀友禅の工房で修業を始め、1974年に独立します。
2010年、重要無形文化財技術保持者(人間国宝)に認定。
糸目糊置きのみで模様を白く表現する「白上げ」と呼ばれる技法を用い、自然をモチーフにした作風を完成させていきます。
控えめな色合いのなかに、風や水の動きを表現した斬新な作品が多く見られます。
談議所栄二
金沢出身の加賀友禅染色家・談議所栄二(だんぎしょえいじ)は、大正初期に岡本光谿に師事し加賀友禅の技法を学びました。
1947年、日展特選を受賞。
加賀友禅の一時代を木村雨山と共に担った作家であり、繊細な描写で表現された草花の模様には定評があります。
加賀友禅には作家の落款がある
加賀友禅には作家もの・一点ものが多く見られ、加賀友禅作家と認められた作家が制作したものには必ず落款が入っています。
加賀染振興協会に落款を登録している加賀友禅技術者のみが加賀友禅作家とされています。
加賀友禅作家と認められるためには作家の工房で7年以上の修行を積んだ上、協会の会員2名の推薦を得て協会の会員資格を取得しなくてはなりません。
加賀友禅の作家や落款は一覧検索できる
(出典:http://www.kagayuzen.or.jp/sign/)
加賀友禅の作家は、必ず加賀染振興協会で落款登録をしなければなりません。
現在300人以上の加賀友禅の作家が協会に落款を登録しています。
加賀友禅の公式ホームページでは、全員の名前と作品、落款を見ることができます。
落款の形からの検索も可能で、たいへん便利です。
加賀友禅に合う帯
次に、加賀友禅の着物に合う帯について考えてみましょう。
着物の帯合わせでいちばん大切なのは、着物と帯それぞれの格です。
一般に織りよりも染めの着物の方が格は上とされます。
紋をつけて仕立ててあれば、さらに格は上がります。
ご自分がお持ちの着物の格をきちんと見極め、どんなお席でお召しになるのかを考えて帯選びをなさるとよいでしょう。
加賀友禅には、織りの袋帯がよく合います。
加賀友禅は武家風の落ち着いた柄が描かれている着物が多いので、帯もあまり奇抜なものは避け、上品なものをお選びになると安心です。
同系色の帯ならばさらに上品に、反対色で引き締めれば個性的に着こなせます。
また草花の柄が多いのも加賀友禅の特徴です。
着物と帯の季節感にずれがないことも大切なことです。
季節を選ぶ草花の柄の着物には、季節を選ばず締められる帯を選ぶとよいでしょう。
全体に柄のみが織られた全通帯であれば、季節を気にせずお使いになれます。
淡い色の全通帯は、一本お持ちになっていればなにかと使える便利な帯です。
お太鼓と胴に柄が入った太鼓柄の帯は柄出しに気をつけて締めなければなりませんが、全通帯であればその必要がありません。
ふくよかな方もスリムな方も柄を気にせず締められる点も、全通帯のよいところですね。
加賀友禅の訪問着は結婚式に着ていっても大丈夫?
訪問着は色留袖の次に格のたかい着物ですので、結婚式に出席なさるときの装いとしてもふさわしいものです。
お友だちの結婚式にご招待されたときには華を添える気もちで装うようになさると、きっと喜ばれることでしょう。
加賀友禅は上品な柄や色が多く、その点でも結婚式にはぴったりの装いと言えるでしょう。
また訪問着には紋を入れて仕立てたもの、無紋のものがあります。
一つ紋や三つ紋の訪問着は準礼装とされ、ご親族として結婚式に出席なさる場合にふさわしい着物です。
ご友人として出席なさるときには紋は一つ、もしくは無紋の訪問着でお出かけください。
お洋服の時と同様に着物や帯は白いものを避け、花嫁さんのお着物の色とかぶらないように気をつけることも大切です。
加賀友禅以外の友禅の着物
次に、加賀友禅以外の各地の友禅について見ていきましょう。
それぞれにその土地独特の特徴があります。
京友禅(京都)
友禅の始まりは京都と言われています。
京友禅は、当時祇園の町で人気のあった扇絵師・宮崎友禅斎の扇絵を着物に取り入れてつくられ始めました。
「淡青単彩調」と言われ、上品でやわらかな色合いが特徴とされています。
柄は抽象的なものが多く、有職(ゆうそく)文様や御所解(ごしょどき)模文様、琳派模様といった古典的な柄を得意としています。
刺繍や金箔などの装飾が施され、より華やかに仕上げられているのも特徴です。
また京友禅では分業制がとられ、作品が完成するまでの多くの工程をそれぞれ専門の職人が担当しています。
京友禅の着物や柄の特徴、値段相場などはこちらの記事で詳しく解説しているので、興味のある方はぜひご覧下さい。
>>『【京友禅とは?】着物の特徴や値段相場、有名作家や落款などを解説!』
東京友禅/江戸友禅
東京友禅はもともと江戸友禅と呼ばれ、江戸時代から生産が始まりました。
参勤交代で関西地方の大名とともに友禅の職人も江戸に移り住み、友禅の技術を伝えました。
江戸の人々の好み、また贅沢禁止令の影響で、東京友禅は落ち着いた色合いや柄が特徴とされています。
色は白・藍・茶など、柄は千鳥や磯の松、釣り船といった江戸の風景を描いたものが多く見られます。
東京友禅では、構図から仕上げまで工程のほとんどを一人の作者が行います。
東京友禅(江戸友禅)の特徴や有名作家などはこちらの記事で詳しく解説しているので、興味のある方はぜひご覧下さい。
>>『【東京友禅/江戸友禅とは?】特徴や有名作家、値段相場などを解説!』
十日町友禅(新潟)
新潟県の十日町地方は、もともとは縮や絣など織りの着物の産地として知られています。
十日町地方では商品開発の取り組みの一環として、昭和30年代に京都から友禅の技術を導入、十日町友禅がつくられ始めました。
振袖や留袖、訪問着、付下げなど、デザインも華やかなものから落ち着いたものまで幅広く製造されています。
青柳・秀美(しゅうび)・吉澤(よしざわ)などが有名ブランドです。
十日町友禅では、工房内で職人たちが一貫生産するシステムがとられています。
十日町友禅の着物の特徴や値段相場などはこちらの記事で詳しく解説しているので、興味のある方はぜひご覧下さい。
>>『【十日町友禅とは?】着物の特徴や作家の落款、値段相場などを解説!』
名古屋友禅(愛知)
尾張・美濃では古くから上質の絹織物を産出していました。
1730年代に入って、京都や江戸から来た友禅師によって友禅の技法が伝えられ、名古屋友禅の製造が始まります。
その後、質素倹約のための政策が推し進められ、名古屋友禅は色数を抑えた単彩濃淡の渋いものになっていきました。
名古屋友禅には手描友禅のほかに、友禅模様を彫った型紙を用いて柄をつける「型友禅」と呼ばれる技法があります。
名古屋友禅の着物や柄の特徴、歴史などはこちらの記事で詳しく解説しているので、興味のある方はぜひご覧下さい。
>>『【名古屋友禅とは?】着物や柄の特徴、歴史、体験のできる工房などを紹介!』
加賀友禅と京友禅の違い
ここでは加賀友禅と京友禅の違いについて見ていきましょう。
加賀友禅はもともと武家に好まれたため、落ち着いた美しさをもっています。
これに対して京友禅は、公家や京の町の豪商の好みに合わせて華やかで豪華なものに仕上げられています。
また加賀友禅では草花や鳥など自然界のものを写実的に表現した柄が代表的ですが、京友禅の柄には抽象的・古典的なものが多いのが特徴です。
友禅染で用いられる画法のひとつ、ぼかしにも加賀と京都では特徴的な違いが見られます。
加賀友禅のぼかしは外側が濃く、中心に向かって薄くなります。
京友禅では逆に内側が濃く、外側に向かってぼかしが使われています。
京友禅では仕上げに刺繍や箔などが用いられることが多いのも、違いのひとつです。
さらに、加賀友禅の大きな特徴に「一貫制」があります。
これは図案の作成、下絵から彩色までを一人の職人が行うというものです。
京友禅の場合は各工程をそれぞれ専門の職人が担当し、こちらは「分業制」と呼ばれています。
友禅の制作で重要な工程のひとつに糊置き(糊伏せ)があります。
糊置き(糊伏せ)は、染料がはみ出さないように糸目糊という糊を防波堤のように置く作業です。
加賀友禅では、昔のままの糯米糊を糸目糊に用いて糊置きが行われています。
一方京友禅では、最近では合成糊を使用することが多くなっています。
加賀友禅も京友禅もどちらも素敵な着物ですが、両者の違いをしっかりと理解しておきましょうね。
加賀友禅の着物の特徴を理解して、美しく着こなしましょう!
加賀友禅は、落ち着きのある繊細な草木柄が特徴の着物です。
季節感を意識して、上品な袋帯や全通帯を合わせると良いことも勉強になりました!
それは良かったわ。
着物の着こなしは柄や帯合わせの他にも、TPOに合わせた格を意識することも重要です。
そのためには他の着物や帯の格を知っておく必要があります。
着物や帯の格やTPO別のおすすめ着物はこちらの記事で解説しているので、合わせて読むことをおすすめします。
友禅染めの着物の特徴や歴史についてはこちらの記事で詳しく解説しています。