「小千谷紬ってどんな着物なの?」
「小千谷紬はどんな帯と合わせてコーディネートすると良いのかな…」
「小千谷紬はどの季節に着る着物なの?」
こんにちは。『着物買取女将』のかずよです。
小千谷紬は絹の風合いが素敵な着物ですが、その特徴や着こなしをしっかりと理解できている人は少なくありません。
私も小千谷紬に興味があるのですが、特徴や小千谷縮との違いがイマイチよく分からなくて…
着物は生地の素材や織り方、柄や模様のつけ方などによって多くの種類があるので、見分け方や違いに迷ってしまうものですよね。
でも安心して下さい。
今回は、小千谷紬の着物や柄の特徴や帯合わせ、着られる季節などについて分かりやすくお伝えしていきますね。
この記事の目次
小千谷紬とはどんな着物?特徴を解説
小千谷紬(おぢやつむぎ)は、新潟県小千谷市周辺で生産される伝統的な織物です。
1975年には経済産業省指定の伝統工芸品に指定されました。
小千谷地方は古くから織物の産地として知られ、1000年以上ものあいだ、越後上布という麻布が織られています。
この麻布に縮の技法を取り入れたものが小千谷縮です。
参考記事:
【小千谷縮とはどんな着物?】特徴や浴衣としての着方、洗濯法を解説!
【越後上布とはどんな着物?】特徴や価格、雪さらしなどについて解説!
小千谷縮は緯糸に強撚糸(強い撚りをかけた糸)を用い、湯もみという工程を経ることで、独特のシボと呼ばれるシワを表現しています。
越後上布と小千谷縮、双方の技術を取り入れて織られるのが小千谷紬です。
小千谷紬は絹の光沢となめらかな手ざわりに加えて、素朴な味わいが特徴です。
柄や模様の特徴
小千谷紬の模様は縞や絣が多く、そのほかにも無地のものや白紬があります。
なかでも緯糸(よこいと)全てに絣糸を使った絣模様「緯総絣」(よこそうがすり)は有名です。
緯糸で織り出される模様に玉繭(たままゆ)の経糸(たていと)が重なることで、ふんわりと淡く感じられる柄が多いのも特徴ですね。
歴史
新潟ではもともと織物が盛んで、古くから越後上布と呼ばれる麻布が織られていました。
17世紀にこの地に移り住んだ播磨国明石出身の浪人・堀次郎将俊がこの越後上布に改良を加え、小千谷縮が生まれます。
小千谷縮の技法が広まり、小千谷地方の織物産業はさらに発展していきます。
江戸時代中期になり、絹織物に小千谷縮の技法を取り入れて小千谷紬が織られはじめました。
いびつで売り物にならない屑繭から紡がれた糸で織られていたため、当時は主に自家用とされていましたが、江戸から明治にかけて起こった飢饉を機に変化が起こります。
飢饉のために麻糸の原料である苧麻(からむし)が不足、小千谷縮を織ることをあきらめ、養蚕業に従事する人がふえはじめました。
これにより小千谷地方の絹織物産業はさらに発展し、小千谷紬は小千谷地方の工芸品として認められていきます。
小千谷紬の価格や値段
小千谷紬は伝統的な着物ではありますが、普段着として使える着物でもあるので、値段はそこまで高くありません。
新品の小千谷紬でも高いもので20万円前後、安いものだと10万円以下で購入可能です。
中古の小千谷紬だと2,000円台からの出品もあるので、着物の中では比較的お求めやすい価格になっていますね。
【新品の高級小千谷紬】
- 生地幅:約1尺(約38cm)
- 最大裄:約1尺8寸8分(約71.44cm)
- 着丈:約4尺2寸~4尺4寸(約160~170cm)
【価格】
189,000円
【販売ページ】
https://item.rakuten.co.jp/maruhisa/20029869/
【中古のお求めやすい小千谷紬】
- 着丈:153cm
- 裄:65cm
- 袖丈:56cm
【価格】
2,160円
【販売ページ】
https://item.rakuten.co.jp/net-shinei/4365698/
小千谷紬は夏以外の季節でも大活躍
小千谷と言えば、夏の着物・小千谷縮を思い浮かべる方も多いでしょう。
麻の着物である小千谷縮とちがい小千谷紬は絹織物ですので、単衣として初夏5、6月や9、10月の秋口にもお召しいただけます。
小千谷紬に合わせる帯は名古屋帯がおすすめ
素朴な風合いが特徴の小千谷紬には、名古屋帯がよく合います。
紬は、どんなに上等でも着物の格としては普段着とされます。
そのため、あまり豪華な帯では着物との釣り合いがとれません。
小千谷紬の落ち着いたやわらかな色合いを引き立てるような帯合せをなさるとよいでしょう。
小千谷紬のコーディネート画像3選
ブルーの小千谷紬×白の染め帯の爽やかコーディネート画像
全体を淡い色で統一した透明感のあるコーディネートですね。
グレーの小千谷紬×名古屋帯の上品コーディネート画像
グレーの1色で統一された大人っぽいコーディネートですね。
紫の小千谷紬の可愛らしいコーディネート画像
小林麻耶さんの着物コーディネートも参考になりますね。
小千谷紬の洗濯やお手入れ法
小千谷紬は絹織物ですので、ご自宅でのお洗濯はおすすめできません。
風合いを損ねることがないよう、着物専門のクリーニング店に依頼される方がよいですね。
小千谷紬の製造工程
次に、小千谷紬が作られる工程を見ていきましょう。
糸作り
(出典:http://oguni-kurumaya.com/shop/contents?contents_id=40295)
小千谷紬には「真綿手紡糸」と「玉糸」、二種類の絹糸が用いられます。
繭を引き延ばして綿状にした真綿から、均一な太さになるように指先でていねいに糸を引き出し、巻き取ります。
これが「真綿手紡糸」です。
「玉糸」は、ひとつの繭にふたつ以上の蚕が入っている「玉繭」と呼ばれる繭からとられる糸です。
節が見られるため「節糸」とも呼ばれます。
この節が小千谷紬の素朴な風合いを出しているのです。
玉糸は数本が撚り合わされ、熱湯で汚れや油を取り除き精錬されます。
絣作り
(出典:http://oguni-kurumaya.com/shop/contents?contents_id=40295)
小千谷紬の絣作りは、小千谷縮の技法を受け継いでいます。
まずは墨つけです。
張り台に張った緯糸に絣定規をあてながら、墨で絣模様の位置ひとつひとつに印をつけていきます。
墨つけを終えた糸は染めの工程に回されます。
小千谷紬の染めの技法には「くびり絣」と「すりこみ絣」のふたつがあります。
まず「くびり絣」では、絣模様の部分に染料が入らないように、墨で印をつけた部分を苧(からむし)できつく結びます。
手作業で行うため、この工程を「手くくり」と呼びます。
かせにした糸を染料につけ、指先で揉みながら染めます。
苧で結んだキワの部分には染料が入りづらいため、とりわけていねいに染めていきます。
もうひとつの染めの技法「すりこみ絣」は、すりこみベラと呼ばれるヘラを使います。
墨つけの印に合わせて、染料をすりこんでいきます。
糸の芯まで染まるよう、ここでもていねいなしごとが行われています。
近年では、多くの色を用いた複雑な模様の小千谷紬がふえていることから、こちらの「すりこみ絣」の技法が多く用いられるようになりました。
染色に使われる染料には、自然染料と化学染料があります。
藍染めや草木染めなど自然の染料で染める場合には、十分に発色させるために時間をかけて繰り返し染めていきます。
織り
(出典:http://oguni-kurumaya.com/shop/contents?contents_id=40295)
糸の準備が整ったら、いよいよ織りの工程に入ります。
織機に経糸をかけ、緯糸を一本とおすごとに印つけをした耳を合わせ、絣合せをしながら模様を織り出していきます。
この工程にはたいへん手がかかり、根気のいる作業です。
高機に代わって機械の力を借りた織り機が導入された現在でも、緯糸一本ごとに柄を合わせる作業は変わらず、江戸時代から受け継がれているのです。
仕上げ
こうして織りあがった生地は、仕上げの工程にまわされます。
まず木舟に満たしたぬるま湯で、反物についている余分な糊を落としていきます。
ていねいに巾を整えて乾かし、砧打ちで真綿のやわらかな風合いを出して仕上げます。
小千谷紬以外に新潟で作られる着物
新潟では古くから織物業が盛んでした。
ここで、同じ新潟で作られる織物をいくつか見てみましょう。
小千谷縮
小千谷縮は小千谷紬の基本となった、たいへん高級な麻織物です。
苧麻(ラミー)という麻を原料としています。
江戸中期に越後上布を改良して生産が始まりました。
シボと呼ばれる独特のシワをもち、シンプルな縞や格子が代表的な柄とされています。
控えめな色合いで、おしゃれ着としても浴衣としてもお召しになれます。
1955年には国の重要無形文化財第一号に、さらに1975年には伝統的工芸品に指定されました。
小千谷縮の特徴や着こなしについてはこちらの記事で詳しく解説しているので、興味のある方はぜひご覧下さい。
>>『【小千谷縮とはどんな着物?】特徴や浴衣としての着方、洗濯法を解説!』
越後上布
越後上布は、新潟県南魚沼市で織られる平織の麻織物です。
小千谷縮や塩沢紬の基になった織物と言われ、麻織物の最上級品とされています。
約1200年以上の歴史をもち、奈良の正倉院には「越布」として今も収められています。
絣や縞の模様が有名で、薄くさらさらとした風合いが特徴です。
1955年に小千谷縮とともに国の重要無形文化財に指定されました。
近年では原料である苧麻の生産量が減少し、後継者不足が懸念されています。
詳しい越後上布の特徴や価格、着こなしなどはこちらの記事で解説しているので、興味のある方はぜひご覧下さい。
>>『【越後上布とはどんな着物?】特徴や価格、雪さらしなどについて解説!』
塩沢紬
塩沢紬は新潟県南魚沼市周辺で生産され、細かい絣模様が特徴の絹織物です。
越後上布の技術を取り入れ、江戸時代中期に生産が始まりました。
塩沢紬の特徴やコーディネートについてはこちらの記事で詳しく解説しているので、興味のある方はぜひご覧下さい。
>>『塩沢紬とはどんな着物?特徴や柄、コーディネート画像などを紹介!』
小千谷紬と小千谷縮の違い
小千谷紬と小千谷縮は同じ小千谷地方で織られています。
名前が似ていることもあり、ちがいが分かりづらいという方も多いでしょう。
けれども小千谷紬と小千谷縮には、はっきりとしたちがいがあります。
小千谷紬は絹の織物、小千谷縮は麻の織物です。
絹と麻という素材のちがいはありますが、着物の格はどちらもおしゃれ着とされます。
小千谷紬という着物の特徴を理解して、美しく着こなしましょう!
小千谷紬は絹の風合いが素敵な着物です。
名古屋帯と合わせた柔らかな印象のコーディネートが似合いそうですね!
その通りね。
着物を着こなすにはTPOに合わせて格や帯合わせなどのコーディネートを考える必要があります。
他の着物の特徴やTPO別のおすすめの着物はこちらの記事で解説しているので、合わせて読んでみて下さいね。