「八重山上布ってどんな模様の着物?」
「八重山上布ってどんな帯を合わせたら良いのかな…」
「八重山上布の価格や値段相場っていくらくらい?」
こんにちは。『着物買取女将』のかずよです。
八重山上布は高級な着物なので、相応の着こなし方やマナーが求められます。
私も八重山上布に興味があるのですが、いまいち特徴や帯の合わせ方が分からなくて…
八重山上布以外にも上布の着物はたくさんあって、違いも分かりづらいですよね。
でも安心して下さい。
今回は、八重山上布の着物や模様の特徴、帯合わせなどの着こなし方、他の上布の着物との違いなどを分かりやすくお伝えします!
そもそもの上布の着物の種類や特徴、模様、格、歴史などについて詳しく知りたい方は、まずはこちらの記事からご覧下さい。
>>『上布の着物とは?種類や格、模様の特徴などを分かりやすく解説!』
この記事の目次
八重山上布とはどんな着物?特徴を解説
八重山上布は、古くは琉球王朝への貢ぎ物としても用いられていた麻織物です。
同じく沖縄の宮古上布とともに、南国のおおらかさを感じさせる織物ですね。
石垣島発祥の麻織物
八重山上布は沖縄県八重山郡周辺、主に石垣島で織られている織物です。
かつては「薩摩白上布」「錆布」「赤縞上布」などと呼ばれていました。
苧麻の手紡ぎ糸が用いられ、麻独特のさらさらとした風合いが楽しめます。
八重山上布一反分の糸をつくるには、経糸で約50日、緯糸に約40日がかかるとされています。
あまりに手間がかかるため、近年では経糸にのみ手紡ぎではない苧麻の糸(ラミー糸)を使用したものも見られます。
柄や模様は白地にきれいな絣がほどこされている
八重山上布では、白地に伸びやかに織り込まれた茶褐色の絣模様がもっとも特徴的な柄行きと言えるでしょう。
染料には、石垣島に自生する紅露(クールー)と呼ばれる植物の根が使われています。
織り上がりには紅露の赤みが強く出ますが、一週間ほど天日で乾燥させていくうちに、より深みのある色合いに変化していきます。
八重山上布の価格や値段相場
八重山上布の価格や値段相場は、新品や中古、生地の状態などによって大きく変わります。
作家ものの八重山上布だと100万円以上するものもあります。
一方でお求めやすい新品の八重山上布は、30万円ほどのものもあります。
中古になると、20万円以下でも購入できます。
以下に2点ほど八重山上布の価格例を記載しておきますので、参考にして下さいね。
【新品の八重山上布】
価格:363,000円
サイズ:
- 身丈:165cm
- 裄:68cm
- 袖丈:49.5cm
販売サイト:
https://item.rakuten.co.jp/auc-miyagawa/sb2113/
【中古の八重山上布】
価格:184,800円
サイズ:
- 身丈:167cm
- 裄:67cm
- 袖丈:49cm
販売サイト:
https://item.rakuten.co.jp/auc-miyagawa/rc4150/
八重山上布は名古屋帯がおすすめ
帯を合わせるときに注意していただきたいのは、着物と帯それぞれの格の釣り合いです。
ここでは八重山上布に合う帯について考えてみましょう。
八重山上布は麻織物なので、格としてはおしゃれ着です。
礼装のための格のたかい帯やあまり豪華すぎる帯では、素朴な八重山上布との釣り合いがとれません。
帯と着物がお互いを生かしあえるのが、よい帯合わせなのです。
八重山上布の着物に合うのは、まずは名古屋帯でしょう。
次に、季節に気をつけることも帯合わせの大切なポイントです。
盛夏のお召しものである八重山上布には、夏帯を合わせましょう。
夏帯の主なものは、絽・紗・羅などです。
絽は糸数本ごとに隙間を作って織られ、縞模様のように見えます。
隙間と隙間のあいだの糸の本数によって、縞の幅は変えられます。
七本絽・五本絽・三本絽などがあり、夏帯の代表とも言えるでしょう。
紗はざっくりと織られた織物。
羅はさらにざっくりとしていて、編まれたようにも見える生地です。
また博多帯は、一年をとおして気軽に締めることができる便利な帯です。
博多帯にはたくさんの色や模様がありますが、八重山上布のような夏の着物に合わせる場合には、さわやかな雰囲気のものを選ぶとよいでしょう。
八重山上布は夏の季節におすすめの麻織物
麻織物である八重山上布は、夏の盛りの短い期間のためだけの特別な着物です。
着物の初心者のうちは、どうしても着られる期間が長い袷をお仕立てになることが多いものです。
そのため、麻の着物は着物上級者ならではのぜいたくと言えるでしょう。
暑いなかでも身体にまとわりつかず、ひんやりとした麻の着心地は格別です。
八重山上布の製造工程|伝統の海晒し
(出典:https://www.premium-j.jp/spotlight/20190719_2453/)
八重山上布の原料であるイラクサ科の植物・苧麻は、年に数回の収穫が可能です。
刈り取った苧麻を水に浸し、柔らかくなったところで皮を剥ぎます。
再び水に浸しながら爪で裂き、糸が作られます。
次に絣糸を作る工程に入ります。
八重山上布では、「括り染め」と「捺染(なっせん)」という二つの方法で絣糸が作られています。
括り染めは絣の産地ではよく見られる技法で、糸やビニール紐を用いて柄の部分を括り、染料が入らないように染め分けをするものです。
一方、捺染は筆を使い色を刷り込んでいく技法です。
八重山上布の捺染では、紅露(クールー)と呼ばれる植物の根が使われているのが大きな特徴です。
この紅露の茶褐色が、八重山上布の絣模様の色そのものなのです。
染料としてはほかにも、マングローブや相思樹、インド藍などの植物が用いられます。
染め上がった糸は八重山式高機と呼ばれる八重山特有の織り機で織られていきます。
八重山式高機の特徴は、経糸の張り具合をおもりで調整できるという点です。
このおもりのおかげで、経絣のずれを防ぐことができるのです。
織り上がった布は、まず一週間ほど天日にさらされます。
この「日さらし」で、植物染料があざやかに発色していきます。
最後に海水に4〜5時間浸す「海さらし」と呼ばれる作業が行われ、地色はより白く、絣模様はよりくっきりとあざやかにうかび上がるのです。
八重山上布の歴史|税金として女性が生産
八重山地方では古くから麻織物が織られ、琉球王朝の御用布として珍重されていました。
17世紀初めに琉球に侵攻した薩摩によって人頭税が課せられ、八重山上布も税の一部として、きびしい監視のもとで織られるようになります。
織り手の女性たちにとってはつらい時代でしたが、八重山上布の技術はこの時期に大きく向上したのです。
1886年にようやく人頭税は廃止され、八重山上布は産業として発展しはじめます。
昭和の戦時には八重山上布の技術は途絶えたかに見えましたが、数名の人々が技術を守り、1989年には伝統工芸品として指定されました。
八重山ミンサー|八重山地方発祥の着物
次に八重山地方に伝わるもうひとつの織物、八重山ミンサーについて見ていきましょう。
特徴
八重山ミンサーは、沖縄県八重山諸島の竹富島が発祥の木綿糸を平織りにした織物です。
ミンサーという名は「綿(ミン)でできた狭(サー)い幅の帯」が由来とされ、もともとは主に帯として用いられました。
竹富島の女性は、このミンサーを愛する男性への贈りものとして織っていました。
五つの四角と四つの四角で構成された絣模様が交互に並び、「いつ(五)の世(四)までも」という思いが込められています。
また帯の両脇に織り出された細い線の縁取りは、ムカデの足を表すと言われ、通い婚の時代ならではの「足繁く通ってほしい」というメッセージなのです。
竹富町発祥のミンサーですが、現在では石垣島でも織られるようになっています。
もともとは藍一色だった色も豊富になり、小物や袋物といった観光客向けの製品にも仕立てられています。
伝統工芸品に指定
八重山ミンサーは、1989年に国の伝統工芸品に指定されました。
手括りの先染め糸を用い織りはたてうね織り、素材は綿であることなどが要件として定められました。
また産地は石垣市と竹富町と規定されています。
歴史
八重山ミンサーの伝来の時期について、正確なことは分かっていません。
アフガニスタンから中国を経て伝わったとされる説や、インドから伝わったという説があります。
文献によると、16世紀の初めにはすでにミンサーが使われていたとされています。
本州で武具や荷物紐として用いられた真田紐は、このミンサー織が本州に伝わり姿を変えたものだと言われます。
戦に出る武将の妻は真田紐に自分の髪の毛を織り込み、武具の紐として送り出し、夫の無事を祈りました。
女性が男性に思いを込めて贈るという点でも、真田紐と八重山ミンサーはよく似ているのですね。
八重山上布以外の上布の着物の種類
八重山上布のほかにも日本各地に有名な上布があり、それぞれ持ち味もちがいます。
ここでは、八重山上布以外の上布について見ていきましょう。
越後上布
北の上布の代表といえば、越後上布です。
産地は新潟県小千谷市、十日町、南魚沼地方、柄行きは絣や縞がたいへん有名です。
薄手で軽やかな生地で、しゃりしゃりとした感触が特徴です。
新潟地方では縄文時代からの麻織物が織られていたとされています。
奈良の正倉院に「越布」として今も保管されていることからも、越後上布の歴史の長さがうかがえます。
1955年には国の重要無形文化財に、2009年にはユネスコ無形文化遺産に登録されました。
越後上布の着物の特徴や着こなし方についてはこちらの記事で詳しく解説しているので、興味のある方はぜひご覧下さい。
>>『【越後上布とはどんな着物?】特徴や価格、雪さらしなどについて解説!』
宮古上布
宮古上布は、沖縄県の宮古島で生産されています。
国の重要無形文化財で、「東の越後、西の宮古」と言われる日本を代表する上布です。
八重山上布と同様に、薩摩の侵略により人頭税として生産を強いられた歴史をもっています。
宮古上布の特徴は、南国らしい柄と琉球藍で染められた艶のある深い濃紺の色合いです。
宮古上布に独特と言われる艶は、生地を木槌で一万回も叩く「砧打ち」によって生まれます。
宮古上布の着物の柄や特徴、コーディネート法などはこちらの記事で詳しく解説しているので、興味のある方はぜひご覧下さい。
>>『【宮古上布とは?】着物の特徴や柄、価格、見分け方、作家を紹介!』
近江上布
近江上布は主に滋賀県の湖東地区で生産されている上布です。
近江上布も国の伝統的工芸品に指定されています。
現在は着物生地だけではなく、洋服向けの生地やふとん、座布団など幅広い品ものが織られています。
鎌倉時代に滋賀に移り住んだ京都の職人が技術を伝え、江戸時代には彦根藩の保護のもとで、農家の副業となっていきました。
近江商人は全国で近江上布を売り歩き、近江上布の名は広まります。
手積みの糸で織られ、染めには櫛押捺染(くしおしなっせん)や型紙捺染(かたがみなっせん)という技法が用いられます。
織り上がった生地には「シボ付け」と呼ばれる縮の加工が施され、独特の風合いが生み出されます。
近江上布の着物の特徴や着こなし方についてはこちらの記事で詳しく解説しているので、興味のある方はぜひご覧下さい。
>>『【近江上布とは?】着物の特徴や価格、大麻の生地の歴史などを紹介!』
能登上布
能登上布は主に石川県鹿島町・鹿西町・羽咋市で織られている上布です。
1960年に石川県の無形文化財の指定を受けました。
昭和初期には麻織物の生産全国一を誇り、現在でも多くの上布が織られています。
さまざまな技法で表される絣模様が特徴です。
能登地方は江戸時代中頃まで、近江上布の原料となる苧麻を栽培する地域でした。
1814年に近江から職人を招き上布の技法を学び、能登上布の生産が始まりました。
海さらしの仕上げが有名で、海水に漬けては乾かすという作業を4、5回ほど繰り返します。
海さらしの後には、ケヤキ製の臼に反物を入れ桐の杵でついていきます。
さらに足で踏みながら湯をかけたり、真水で洗ったりと仕上げの工程が続きます。
こうして、さらさらとした着心地の能登上布が出来上がるのです。
能登上布の着物や絣柄の特徴、帯合わせなどはこちらの記事で詳しく解説しているので、興味のある方はぜひご覧下さい。
>>『【能登上布とは?】着物や絣柄の特徴、価格相場、帯合わせなどを解説!』
八重山上布の特徴を理解して、キレイに着こなしましょう!
八重山上布は夏にピッタリの清涼感のある着物です。
名古屋帯や夏の帯と合わせると良いことも勉強になりました!
それは良かったわ。
着物の着こなしでは、TPOに合わせて着物や帯の格を意識する必要があります。
そのためにはそれぞれの着物や帯の格を理解しておくことが重要です。
こちらの記事では着物や帯の格を一覧でまとめているので、合わせて読むことをおすすめします。